無理なく、無駄なく美しく。
N様邸(岐阜県高山市)
車の往来と観光客でにぎわう、S子さんの住まいは繁華街の一等地。店舗と住まいを併用する鉄筋コンクリート4階建てのビルの最上階が訪問先である。自宅用のエレベータを降り、ドアを開けると目の前にリビング・キッチンが広がるという、予想外の展開に驚き、ここがかつて物置きだったとは想像するのが困難なほど、豊かな空間が目のまえに出現した。郊外の一戸建てにはない厳しい環境のなかで、S子さんがリフォームに求めた条件とは?その解決法とは?
【インタビュアー/馳 純】
—— リフォームしようと思ったきっかけは?
現在、町の中心部から離れたところで暮らしています。田んぼや草花に囲まれ、子育ての環境を考えると、まわりがビルばかりというのはどうかなと思ったのですが。でもゆくゆくは親といっしょに暮らすつもりでいましたし、いまの家賃を倹約することもできますので、暮らすなら今だと思い、決心をしました。ビルの1階と2階は両親が経営する飛騨牛料理の店。3階は子どもたち。そして最上階がわたしたちの寝室と、リビング・ダイニングという風に、間口がせまく、奥行きの長いビルを有効活用しました。
—— シードックホームに決めるまでの経緯と選んだ決めて。
両親には資金面で協力してもらいましたから、まずはスポンサーが信頼できる建築家さんと言うことで、シードックさんが候補にあがりました。幸いにもプロデュースされた方が、父のお店のお客さんでしたから。シードックホームさんはデザイナーズホテルのような格好良い設計を数多く手がけていて、それがわたしたちの決定ポイントでした。4階の半ば物置化した場所を、リビング・ダイニングに変えるわけですからね。デザインセンスの有る無しは重要です。
—— 新築を多く手がけるシードックホームに、リフォームを頼むことに不安はありませんでしたか?
お願いする側としては、新築会社だからとかリフォーム専門会社だからという、住み分けはありませんでした。見てのとおり、鉄筋コンクリート造り特有の大きな柱が壁から飛び出ているし、リビング・キッチンに陽がさんさんと注ぐわけでもありません。ベランダは通りに面している関係で、目隠し状態。さらに家のまえには車が置けないというマイナス面があります。リフォームによってマイナス面をくつがえすだけのプラスが生まれないと困るのです。担当の方には「ここで寝起きしたくなるようなキッチンにしてください(笑)」とだけ、頼みました。
—— 工事中のスタッフや職人の印象は?
面と向かって「ここはこうしてほしい」と言いずらいイメージが職人さんにはあります。父も料理人ですから、頑固です。でも、ウチに来て頂いた方はどの方も気さくで、こちらのリクエストに耳を傾けてくれたのは意外でした。平面図と実際との間にはどうしてもギャップが出てきますから、現場で臨機応変に対応して頂けたのは、とてもありがたかったです。
—— 完成したお部屋は想像していた通りのものになりましたか。
私のなかでは「キッチンといえば、壁側にど~んとあるもの」というイメージでしたから、最初のプランで『対面キッチン』を提案されたときは、「えっ、こんなのもあるんだ!」って感じで、目からウロコでしたね。この空間の核は見てのとおりキッチンで、ここを決めてから細部をつめていきました。カウンターの後ろにクローゼットがあったり、フローリングと同じ流れで畳のリビングがあったり、寝室スペースをカーテンで間仕切ったり、収納棚をロールスクリーンで隠したりと、従来の枠に捕らわれない発想が、凸凹の少ないシンプルな空間を生みました。
—— 気に入っているところは?
対面キッチンのカウンター回りです。当初、カウンターは正面だけだったのですが、両親にも座ってもらおうとすると、スペースが足りない。そこでL字型にカウンターを増やし、普段使いのときは折り畳めるようにしたことです。「カウンター上のペンダントライト、素敵でしょう?」これはシードックホームさんに無理を言い、わがままを通しました。予算では収まらないライトだったですが、付けて頂いてとても感謝しています。繁華街のビルという構造上、自然光が入らなくて、昼でもダイニング回りは人工光が必要なんです。だったらということで、カウンターの天井部には 間接光を使い、ダウンライトとあわせて、ラウンジのような落ち着いた雰囲気を提案していただきました。
—— 工事の仕上がりと価格のバランスは?
限られたスペースのなかに多くの機能を求めれば、必然的に、予算は高くなります。ところが予算枠が決まっているなかで、求められる条件が多くなるリフォームは、建築会社にとって力が試されるジャンルです。予算以上の出来に、リフォームも任せられるシードックホームさんの底辺の広さを知りました。
—— これからリフォームを考えているかたへ。
住まいは住む人それぞれの人生が凝縮されているところですから、各々の考え方や好みが違って当たり前。でもキッチンやリビングなどはみんなで使うスペースだから、それぞれの好みをいいだしたら、まとまらないでしょう?「今よりも素敵な暮し方をするんだ」という意思のようなものを持ち、家族でよく話し合う。そして設計士さんの考えを聞きながら、要望は妥協せずはっきり言う。「たかがリフォーム。されどリフォーム」には、密なコミュニケーションは欠かせないものだと思います。
最初に建てた家は欠点だらけでした。快適な家について無知でしたから仕方がなかったのですが、そのぶん勉強することができました。住まいづくりは「人生をどう生きるか」にかかわる大切なものだけに、妥協しないことが大切です。これからの人生に希望がもてるような、そんな住まいであってほしいと思います。最後に「希望は、つくるものである」。シードックさんと出会って知った私の格言です。